Historia

木下尊惇 九州ライブを終えて

2000.6.2 福岡「カフェ・ド・カッファ」にて

 今年も6月に福岡、佐賀、北九州で、ライブを行うことができました。
プログラムは、7月リリース予定の「涙色の首飾り」から9曲、フォルクローレのスタンダードの弾き語り、アンコールを含めると26曲と2時間半に及ぶライブとなりました。
昨年同様、ギターの二重奏では、クラシック・ギターの関谷さん、若菜さん、松下さん、池田さんが快く引き受けてくれました。弾き語りでは、ボリビアから帰ったばかりの、中山さんがサンポーニャを吹いてくれました。北九州ではフォルクローレ・ファンがたくさん来てくれました。北九州はエクアドルのグルーポ「シサイ」の影響でフォルクローレが盛んになりつつあります。シサイがストリートで演奏をするので誰でも気軽にフォルクローレに接することができます。
また今回は、フレット楽器モリオカさんの協力でクラシック・ギターを弾いている人達のためにフォルクローレの歴史、リズム、奏法の講習会がありました。熱心にメモを取っている人もいました。
 昨年は、ブルーグラスの人達と一緒に演奏した「虹のたもとへ」を今年はみんなで歌うことができました。準備の段階でカッファのマスター平田さんが同じ空間で同じ時を過ごしたことを確認するためにみんなで歌おうと言ってくれたので歌詞をプログラムに載せ、どの会場でも歌うことができました。とても印象に残る曲でした。
木下さんともフォルクローレについて色々話しました。今フォルクローレは、過渡期です。滅び去ったインカ、哀愁の笛ケーナ、民族衣装、このようなことが通用する時代ではないようです。ボリビアでは若い人達が、楽譜を読むことや音楽理論をまじめに勉強しているそうです。その人達がやろうとしている、イベントの出し物でない音楽として聴いてもらえるフォルクローレに期待したいと思います。木下さんには、日本全国で、音楽としてのフォルクローレを演奏してもらいたいものです。
 最後に今回のライブにご尽力いただいたカッファの平田さん、小城町の古賀さん、吉野ヶ里さん、小柳酒造の小柳さん、PAを担当してくださった北村さん、昭和湯の山田さん、北九州のエルヴィス吉川さん、ギターを一緒に弾いてくださった関谷さん、若菜さん、松下さん、池田さん、練習場所を提供してくださった小山さん、そしてクラシック・ギターという立場を越えて講習会を開いてくれた森岡さんに心より御礼を申し上げます。

四辻一樹

 私は熊本からビエントの与田清明氏とともに佐賀県小城町まででかけました。例によって独創的な曲風と淡々とした歌声は顕在でした。今年はオリジナル中心の流れで、チャランゴのソロがなかったのは「チャランゴ弾き」としてはちょっと残念でしたが、ボリビア帰りの中山雄一氏のサンポーニャとのかけ合いや、ギターソロではまるで山梨鐐平のようなエキゾチックさを感じ、「ゾクッ」としてしまいました。「フォルクローレ」の現状は多種多様なものがありますが、ベースには不変のものがあると信じるものです。今回のライブはたくさんの人たちの情熱と協力によって行なわれたと聞いております。四辻さんをはじめとするスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

仲野豊

 私は去年に引き続き、木下さんからレッスンを受けました。私は長年クラシック・ギターをやってきておりましたが、4年前から縁あって、フォルクローレの道に踏み込みました。フォルクローレ・ギターの奏法は、折にふれ、四辻さんからちょこちょこ習っておりましたので、期せずして木下さんのレッスンの下準備となりました。その四辻さんも木下さんとは、10年来のお付き合いだそうですから、私はフォルクローレ・ギターを習ううえで、この上ない環境を授かったといえるでしょう。
 さてレッスンの内容ですが、去年は 6/8 拍子系のカルナバルとクエッカ、そして今年は 2/4 拍子系のワイニョを習いました。去年も今年も、時間の半分以上をかけて、実際の奏法よりは、リズムの成り立ちや構造について理論的に詳しい説明がなされました。極端な話、その理屈にのっとていたら、どんな弾き方でも構わないということでした。例えば、カルナバルの場合、6拍のうち1拍と4拍にアクセントをおけばいいと、あるいは、おかなければならないと。それから、アクセントのある拍を表とすれば、その裏を弱く弾かなければならないと。慣れてくれば、表も裏も同じ強さで弾いてしまいます。そうすると、なかなか生き生きとしたリズムになりません。以上2点に注意しながら、あとは木下さん流の弾き方を習うのでした。「よく、フォルクローレ・ギターの弾き方を教えてくださいと言われるんですが、南米にフォルクローレ・ギタリストが10人いたら10人とも違う弾き方をします。じゃーどうして他の楽器の人方と合わせられるのかというと、みんながリズムの軸をもっているからです。それぞれが勝手なことやっていても、リズムの軸というものを理解しているから、たとえ初めて会った人たちとでも、その場で合わせることができるのです。だからフォルクローレ・ギターの奏法については、私はこういう弾き方ですよ、という言い方をするのです。」6月5日モリオカ・ギターフロアでのレクチャー・アンド・コンサートのなかでの木下さんの言葉です。
 こういう風に、知識が広がって行けばよりフォルクローレが面白くなっていきます。ただ演奏技術が追いついていかないのが残念です。日々練習にはげめばいいことなのですが、なかなか・・・。
 最後に2年にわたって、こういう機会をつくっていただいた四辻さんをはじめ、関係の皆様ありがとうございました。 来年以降も続きますよう、協力の輪がさらに広がるよう、これをご覧になる皆様のご支援を期待します。そして、木下尊惇(きのした たかあつ)が九州から火がつくようになったら素晴らしいと思います。

松田秀仁